【営業マン奮闘記②】夜のすすきのでスイーツを売っていたら「おにいさん、何かやりたいことあるのかい?」と声をかけられた話

夜の繁華街の交差点を行き交う人たち(イメージ) 暮らしの本音

気づいたら、夜のすすきので、スイーツを手に通りすがりの人へ声をかけていました。はたから見たら、ほとんどキャッチです。

今回は、そこで出会った一人の男性の話です。ただ、その前に、当時の一日がどんなふうだったかを少し書かせてください。

航空地図にマーカーで線を引く朝

朝はオフィスでミーティングから始まります。

それが終わるとチームに分かれて、それぞれのテリトリーへ向かいます。札幌全域の航空地図をマーカーで区切って、「今日はここ」と決めたエリアを歩いて売る。いわゆる歩き売りです。

トレーニーの頃は、リーダーと一緒に地下鉄で移動していました。

そのうち、運転ができるという理由で、一台しかない社用車を任されるようになりました。4〜5人を乗せて、それぞれのテリトリーで降ろしていく。全員を降ろしてから、ようやく自分のテリトリーへ。

だから、スタートはいつも最後。営業を始められるのは、だいたいお昼ごろでした。

夜8時まで歩いて、そこからすすきのへ

そこから夜8時くらいまで回ります。

営業が終わったら、いったんオフィスに戻ります。そこから、まだ売りたい人はすすきのへ。

終電までには売り切ろう!と、いつも深夜まで営業に出向いていました。

暑い日も、寒い日も。

怒られる、断られる、否定される。それが普通だった

声をかけて、断られて、また声をかける。売れるまで、何度でも。

怒られること、断られること、人として否定されること。それは当たり前でした。

それでも、足を止めてくれた人には、笑顔で、心からのありがとうを伝えていました。人の心が動いた瞬間を、感じるからです。

その日は、なぜか視線が気になった

上着を着ていたので、肌寒くなってきた頃だったと思います。

その日も、すすきのの、ちょっと辺鄙な場所の路上で、ひとりで元気よく、断られまくりながら売っていました。

ふと、こっちをずっと見ている人がいるなぁ、と感じました。

見られること自体は、いつものことです。こんなところで、ひとりで断られ続けながら声を出しているんだから、まあ物珍しいんだろうな、と。いつもは気になりません。もう慣れてしまっていたので。

でも、その日は違いました。なぜか、その視線を無視できない。異様に気にしてしまっている自分がいました。

そんなことより、集中して売らなきゃ。

そう思っていたら、その人が、すーっと近づいてきました。

「おにいさん、何かやりたいことあるのかい?」

近づいてきたその人は、そう声をかけてくれました。たぶん、さっきからずっとこっちを見ていた人です。確証はないんですけど。

路上で、夢を語った

なんと返したのか、正確な言葉は覚えていません。

ただ、当時の僕は独立を目指していました。働くことの楽しさを伝えられるような会社を作りたい。そう思っていたので、そのことを話したんだと思います。

夜のすすきので、スイーツを持ったまま。

その人は、笑いながら、優しくこう言ってくれました。

「大変だと思うけど、今やってることをそんなに楽しそうにできれば、大丈夫かもね」

それにしても、どうして「やりたいことあるのかい」なんて聞いてくれたんだろう。疑問に思って、聞いてみました。

「お兄さんの目を見たら、なんとなくそう思ってさ」

そして、スイーツも買ってくれました。

その人は、ユニクロを着ていた

50代くらいの、スラっとした人でした。話し方が優しくて、いろんな経験をしてきたんだろうな、と感じる人。

聞けば、不動産関係の会社を経営していて、年商は当時で10億くらい。

当時の僕からしたら、果てしない数字です。まあ、今でも全然及ばないんですけど。

でも、着ていたのはユニクロでした。

その人とは二回ほど会ったはずなんですが、理由も話してくれました。

会社の経営は何があるかわからない。だから節制している。目立ちすぎないようにもしている、と。

豪遊もしない。飲みに出るのも月に一度くらい。こうして一人で、自分へのご褒美みたいに飲みに来ているんだ、と。

ちなみに、この人にも行商の経験がありました。たしか、野菜を売っていたんじゃなかったかな。そんなイメージで残っています。

心が豊かな人

節制している。でも、困っているわけじゃない。

うまく言えないんですが、心にゆとりがあるように感じました。本当に紳士的な人でした。

心が豊かな人。

そう言えば、伝わるでしょうか。

芯がある人になりたい。贅沢をしなくても、人生を楽しめるようになりたい。今も本気でそう思っています。

断られ続けていた夜に、足を止めて、こっちの夢を聞いてくれた。そして「大丈夫かもね」と笑ってくれた。

あの言葉は、今も残っています。

※写真はイメージです。

タイトルとURLをコピーしました